○電源系
しんえん2電源系は,(1) 探査機各システムへの安定した電力供給,(2) シングルラッチップイベント対策,(3) 過充電・過放電・過電圧の防止,(4) 搭載二次電池容量だけにより地球-月間(38万km)を確実に機器を動作させる,(5) 熱真空環境に耐える,および(6) 冗長性をもたせ,衛星全機能が失われるのを防ぐ,といったことが要求される.
ところで,しんえん2は,フィーダリンク回線および衛星識別回線のためのA系,トランスポンダ回線のためのB系の2系統から構成される.C系は電力的に完全に独立である.A系とB系の電力系は共通であり,結局しんえん2は冗長系を実現させるために2系統の電力ラインを持つ.C系の電力ラインはMAINとSUBがあり、冗長設計を実現している.このMAINとSUBは時間管理され,ある決められた時間で動作を切り替える.しんえん2電源系のブロック構成,および電力管理を以下に示す.
しんえん2電源系のブロック構成
しんえん2の電力管理
しんえん2のバッテリー(二次電池)はリチウムイオンバッテリーであり,標準電圧3.6[V],標準容量3250[mAh]の電池を16個直列につなげたもので全体の容量は52000[mAh]である.しんえん2は,このバッテリーを2つ搭載している.仮に、バッテリー1つが故障したとしても,残った1つのバッテリーで地球から月までの間の全てのミッションを実行できる容量を有している.
太陽電池はシリコン単結晶セルであり,最大動作点電圧は0.518[V],最大動作点電流は5.381[A],開放電圧は0.632[V],短絡電流は5.64[A]である.太陽電池によるバッテリーの充電制御は,MPPT制御モードと定電圧モードの2つがある.バッテリー容量が少ないときにはMPPT制御モードで,バッテリーが十分に充電されているときには,定電圧モードで充電する.しんえん2では,定電圧モード電圧を4.1[V]に設定し、満充電しない充電管理方法をとっている.電源供給を必要とするしんえん2搭載機器の諸元を示す.
搭載機器 | 個数 | |
A系 | 430MHz送信機 TX-A(フィーダリンク) | 2 |
145MHz受信機 RX-A | 2 | |
通信制御 CCU_A | 2 | |
電源制御 PCU_A | ||
衛星制御 SCU-A | 1 | |
Particle Pixel Detector | 1 | |
430MHz 送信機 TX-C(モールス) | 1 | |
バッテリヒータ | 1 | |
太陽電池 SAP | 24 | |
二次電池 BAT | 16 | |
B系 | 430MHz送信機 TX-A | 2 |
電源制御 PCU-B | 2 | |
バッテリヒータ | 1 | |
太陽電池 | 18 | |
二次電池 | 16 |
構造内でのハーネスによるケーブルロスを減らすために充電制御回路は太陽電池が貼ってある面の裏側に固定した。以下に、充電システム構成図を示す。
充電システム構成図
【開発メンバー】
- 鹿児島大学 西尾研究室
- 修士2年
- 森田大貴(電源・通信)
- 中野大(通信・安全審査)
- 和合佐友里(制御ソフト)
- 北迫千歩(運用/軌道)
- 修士1年
- 尾池隼弥(電源/電池)
- 南園幸一郎(電源/太陽電池)
- 松永唯宏(試験・運用)
- 山下朋也(試験・運用)
- 学部4年
- 岩元辰樹(制御ソフト)
- 江藤翔太郎(試験・運用)
- 日吉桃子(試験・運用)
- 山崎恵美(試験・運用)
- 土元哲平(試験・運用)
- 前田祥良(電源/太陽電池)
- 修士2年